SOHO/マイクロビジネスの現状と課題

青森大学経営学部助教授 柴田郁夫

1. はじめに

 「SOHO」や「マイクロビジネス」という用語がインターネット上や新聞、雑誌等のマスメディアで最近、頻繁に使われている。しかしそうした用語の定義が確定されているわけではなく、またその規模(人数)も明確にはわかっていない。
 本稿では、そうした用語の指している内容(定義)を整理し、また規模(人数)も含めた、その現状をできるだけ客観的に描き出し、そこでの課題やまた地域経済にとって意義を考察したい。

2.SOHO/マイクロビジネスという用語の広がり

 「SOHO(ソーホー)」は、 スモールオフィス・ホームオフィス(Small Office & Home Office)の略語で、一般的には「パソコンなどの情報通信機器を利用して、小さな貸オフィスや自宅などでビジネスを行っている者」といった意味で使われているが、厳密な定義は確定されていない。(1) 1997年頃から、まずはSOHOというビジネススタイルを成り立たせる「テレワーク」(2)という言葉がマスメディアに登場するようになり、その後「SOHO(ソーホー)」という言葉も、頻繁に登場するようになった。(3) そして現在ではSOHOは、かなりの頻度でインターネット上やマスメディア等で用いられる用語となっている。
 インターネット上で「SOHO」を検索してみる。検索サイトGoogleの日本語サイト(http://www.google.com)を用いて、「SOHO」が含まれる日本語のページを検索したところ、なんと162,000件がヒットした。(4) またヤフージャパン(YAHOO!JAPANhttp://www.yahoo.co.jp/)のカテゴリー検索では、「ビジネスと経済」の中の「雇用」というカテゴリーの中に分類されており、そこには50件のデータが表示されている。(4) 50件は主としてSOHOグループやSOHO支援団体、SOHO向けメールマガジンの発行主体などである。日本SOHO協会や日本SOHOセンターなど、SOHOが集まった団体で、年会費を徴収して会としての運営を行っているところから、インターネット上だけで求人、求職情報の登録や検索を行っていたりメールを発行しているところなど雑多であるが、何らかのSOHO関連の集まりが、最低でも数十はすでに存在していることがわかる。先のGoogleの検索結果162,000件の内の上位1,000件ほどを検討してみたが、ヤフージャパンの50件には表示されていないSOHOの集まりと思われるものが、さらに数十件ほどは見つかった。そこでは「Seaside SOHO(横須賀)」や「滋賀県SOHO同友会」など地域でのSOHOの集まりが目に付いた。また主婦が自宅でSOHOを始め、その際の苦労談や営業ノウハウなどをホームページ上で公開し、そこでの電子掲示板をベースとして小さく緩やかな集まりが形成されているといった例も多い。単純にそれを162倍はできないが、1万件に近いSOHO関連の集まりが草の根的に立ち上がっているという予測も成り立つ。
 SOHOの特徴は、パソコンなどの情報通信機器を用いて、小規模でビジネスを行うといった点にあるため、今後も上記のような草の根的な集まりや、またホームページは増加傾向を示すと考えられる。
 一方、SOHOに近い意味で「マイクロビジネス」という言葉がある。社団法人日本テレワーク協会が2000年に立ち上げた「マイクロビジネス協議会」では、マイクロビジネスを「個人事業主および従業員5人以下の零細法人の経営者。つまり雇用保険(労災と失業保険)に加入していない層=従業員(社員)ではない層をさす。業種、職種は問わない」(5)としている。「マイクロビジネス」という用語でもGoogleの日本語サイトでは、1,000件弱のヒット数が出てくる。
 いずれにしても、SOHOやマイクロビジネスという言葉が既に一般的に使用されており、かなりの広がりを見せていることがわかる。

3. SOHO/マイクロビジネスの定義

 2000年12月に財団法人化した日本SOHO協会のホームページによれば、SOHOは
「IT(情報通信技術)を活用して事業活動を行っている従業員10名以下程度の規模の事業者のこと。主にクリエイター、フリーランサー、ベンチャー、有資格者、在宅ワーク等が対象」(6)とされる。また「SOHOタイプ別分類」として、中小企業系、ベンチャー系、クリエイター系、サムライ系、在宅・NPO系、大組織系・テレワーカーの6つにSOHOが分類されている。しかしこの6分類に関しては、日本テレワーク学会の研究発表大会において、W.A.スピンクス氏(東京理科大学工学部助教授)が【表1】のような修正案を提示している(1)

【表1】SOHOの類型(W.A.スピンクス、第3回日本テレワーク学会研究発表大会論文集,2001より)

 確かに、日本SOHO協会によるタイプ分類の1「建設業などのアナログ中小企業」や6「保険代理店、FC加盟店オーナー等」は、従来からある零細企業や個人企業とどう違うかが明瞭ではない。街の八百屋さんや農業をしている祖父母、保険のおばさんもSOHOか?と言われれば首をひねらざるをえない。日本SOHO協会がSOHO人口を多く見積もるという観点からタイプ1やタイプ6まで含めてSOHOということも理解はできるが、一般的なSOHOという言葉のイメージからみると無理があるように思え、その意味ではスピンクス氏の修正案が妥当と考えられる。
 しかし情報化は進んでいる。現在では零細建設業や製造業・保険代理店等においてもパソコン等を用いることは常態化している。街の八百屋さんや農家はインターネットでホームページを開設してBtoCのEC(エレクトロニックコマース)を始めたり、保険代理店もパソコンとネットワークを駆使してフィナシャルプランナーとなっている。そうした現状を見れば、タイプ1やタイプ6の中にもSOHO(ITを活用して事業活動を行っている従業員10名以下程度の規模の事業者)と呼べる層は存在すると言うこともできる。
 かりにITの活用の有無が、SOHOかそうでないかの分かれ道になるのだとしたら、今後は、タイプ1や6でもSOHOと言える層は確実に増加していくと思われる。
 スピンクス氏の修正案で、「基幹SOHO」とされるのは、「個人起業家ながら組織拡大志向もあるアーリーステージベンチャー」とされ、これは規模の小さなベンチャーそのものである。職種にはとくに言及されていない。また「専門SOHO系」とされるのは、クリエーターなどの「感性職人」や、弁護士などの「有資格者」、翻訳家などの「技術者」の3類型である。そしてこれらがSOHOの中心的な層として捉えられている。しかしここで注意を要するのは、これらの層でもIT活用が前提とされていることである。弁護士でもパソコンやネットワークを使わない層は、SOHOとは捉えられていない。「テレワーク」というITを活用したワークスタイルがベースとなって、その上にSOHOと呼ばれる層が現出するという整理がなされている。
 引用してきた日本SOHO協会の分類やスピンクス氏の修正案を元に筆者の案を掲げれば、そのワーカー(個人)がSOHOか否かを決定する要因は、1)テレワークというワークスタイルで業務を遂行していること、2)小規模なオフィス(在宅オフィスや10人程度までのオフィス)での業務を遂行していること、の2点に集約できるのではないかと考えている。1)のテレワークとは、a)ITを活用していること(ITが業務遂行に必須となっていること)、b)業務を行う時間や空間を自ら選べること、の条件を充たしていることである。

【表2】SOHOの定義(SOHOと見なされる要件)

1) テレワークというワークスタイルで業務を遂行

a)ITの活用=ITが業務遂行に必須となっていること

b)業務を行う時間や空間を自ら選べること

2) 小規模なオフィス(在宅オフィスや10人程度までのオフィス)で業務遂行


 そのワーカーがどのような職種についていようが、上記の1)2)を充たしていれば、SOHOと呼べると考えている。農業を例にとれば、もしもインターネットを用いて天候や市場状況等の情報収集、あるいは販売業務(直販など)を行っており、それが既に必須業務になっているとしたら、その個人(農業ワーカー)は「ITが業務遂行に必須となっている」ということで、【表2】の1)−a)を充たしている。また【表2】の1)−b)の「業務を行う時間や空間を自ら選べること」に関しては、農業の場合、会社(農事)法人の社員できっちりと作業が決められているような場合を除いては、仕事を行う時間や空間は自らの裁量で決めている(天候や発育状況などでままならないことはあったとしても)事がほとんどであろう。従って1)のテレワークを行っていると言える。また2)もほとんどの場合クリアしていると考えられるため、農業を営んでいるその個人は、SOHOと呼べる、という考えである。
 また【表2】にあてはめれば、企業に属した被雇用者が、在宅勤務やサテライトオフィス勤務を行っている場合もSOHOに含まれることがわかり、これは「被雇用者SOHO」と呼べるものである。スモールオフィスやホームオフィスで業務を行う者というSOHOの本来の字義からいっても、テレワークを行う被雇用者がSOHOに含まれるという定義は妥当なのではないかと考えられる。
一方マイクロビジネスという言葉には、「雇用保険(労災と失業保険)に加入していない層=従業員(社員/被雇用者)ではない層」(マイクロビジネス協議会)という定義がなされており、この点がSOHOとの明確な差異となっている。マイクロビジネスは、オフィスの大きさや場所に注目した概念ではなく、「雇用されていない=自立・自律した働き方」という働く姿勢や心の有り様に注目した上での命名である。
 以上をまとめる形で整理すると【図1】のようになる。テレワークで業務を遂行している「テレワーカー」(全体円)のなかで小規模オフィスで業務を遂行している者がSOHOである。SOHOには大きく分けて@〜Bの種類がある。@は、事業者登録をしている個人事業者や従業員規模10人未満程度のオフィスの代表者層。Aは、主婦層や高齢者層、またサラリーマン(被雇用者)の副業、学生アルバイトなど事業者登録をしていない層で、SOHO予備群などとも呼ばれることのある層。Bは、被雇用者でテレワークを行い小規模オフィスや在宅で勤務している層である。
 テレワーカーのなかには、小規模オフィスや在宅で勤務していない者もいるので、それらは図では「SOHO以外の被雇用者テレワーカー」と表示している。携帯端末を持って勤務をしているような、いわゆる「モバイルワーカー」等をイメージしている。またマイクロビジネスは、被雇用者ではない、という観点から破線の円で表示した。

【図1】テレワーカーとSOHO、マイクロビジネス(MB)の分類

 蛇足であるが、A非事業者SOHOは「SOHO予備群」や「周辺型」といった表現をされることがあるが、逆にこうした層がSOHOの中心的な存在として把握されることもある。SOHOをタイトルに冠した書籍等(「SOHOのすすめ」といった類の書籍)の多くが指しているSOHOの意味は、主婦層であることが多い。インターネット上のSOHO向けとされるサイトでも、その対象者が主婦層をメインとしている場合が圧倒的である。これもSOHOの定義が曖昧なまま、広く言葉が流布してしまったことの現れでもある。
 主婦層の場合、1年間を通じての収入がほんの1〜2万円の層がいたり、またかなり専門性が高いワーカーとなっている場合でも、夫の扶養控除の枠内に入るために年収が100万円前後を越えないように抑える場合も多く、概して収入が少ない。それが「予備群」といった呼称の背景であるが、一方、SOHOとはそうした「低収入の主婦層」のことである、という認識を前提として、クリエーターやデザイナー達の中には「自分はSOHOではない」と強く主張する者達がいる多いこともまた事実である。

4. SOHO/マイクロビジネスの規模(人口)

 前述したSOHOの定義にそってSOHOやマイクロビジネスの人口を推定したい。まず【図1】の@〜Bの各人口を算出する。
 @の事業者SOHOを算出する上での基礎データは総務庁統計局による「事業所・企業統計調査」である。財団法人日本SOHO協会のホームページにある「SOHOを組織規模だけで見るなら、10人以下のSOHO事業所数は約540万カ所。関係ワーカーは約1568万人となり、「4人以下」の事業所は409万カ所(総務庁、97年度)」(6)との記述も、同調査の平成8年調査によるものである。
 しかし、「関係ワーカーは約1568万人」という数値をとってみても、これは全産業にわたっての数値であり、まさに「組織規模だけ」から見た数値であるにすぎない。これは既存の零細企業の統計数値をそのまま当てはめようとしたものにすぎず、SOHOという用語をわざわざ使う意味がない、という意見も当然でてこよう。  
 先の定義をもとにずれば、ITが業務遂行に必須となっている事業所がどのくらいあるのか、という比率が重要になってくるのであるが、残念ながら現在公表されている「事業所・企業統計調査」からは関連数値を取得することはできない。(7) 
 2001年2〜3月に行われた「職場におけるインターネット普及率調査」(日経BP社調査部、ビデオリサーチ、ビデオリサーチネットコム)によれば、「日本の就業者の職場での インターネット普及率は33.5%である」(8)とされる。業種によってもかなりのばらつきがあり、「情報通信 ・コンピューター業の80.5%は別格にしても、普及率2位の印刷・出版・放送・広告の50.0%に対して農林水産・畜産・鉱業勤務者では7.8%と大きな差が生じている」との結果が公表されている。従業員規模によっても差異があると考えられるが、この調査における企業インターネット普及率(平均値)33.5%を、他の調査の数値と比較してみると、例えば「IT活用企業についての実態調査・情報関連企業の労働面についての実態調査」では、全産業のIT活用率(1人1台以上のパソコンが普及をしている企業の割合)は全産業系で49.5%となっている。(9) ただしこちらの調査は従業員300人以上の企業が対象であるため、両者の調査を比べると従業員規模が大きい企業ほどIT化が進んでいることが推定できる。もちろん正確な数値ではないが、従業員10人程度以下の企業では、IT化の比率はおおよそ20〜25%程度と想定できるのではないだろうか。さらにこの中から、「ITが業務遂行に必須となっている」企業の割合を出す必要があるが、その割合はここでは上記の数字のおよそ半数10〜12.5%と見積もることとしたい。
 従って、「事業所・企業統計調査」の平成11年調査で把握されている従業員10人未満の企業5,067,707事業所、そこに関わる従業員数は15,685,901人の数値も、ITが業務遂行で必須となっている企業に限定すればその10%強程度に割り引いて見なければならず、おおよそ事業所数は50〜60万程度、関連ワーカー(従業員)数は150〜200万人程となると想定できる。
 またここで従業員がすべてSOHOかといえば、それは違うと言うことになる。先の【表2】の1)−b)では「業務を行う時間や空間を自ら選べること」という項目を示したが、従業員が10人にみたない企業の従業員が皆こうした裁量を有しているとは考えられない。従業員までもSOHOである、という認識はできないと考えられる。ここでは少なくとも零細事業所のトップ層、約50〜60万人が事業者SOHOであるとしたい。
 A非事業者SOHOに関しては、厚生労働省(旧労働省)の委託に基づいて日本労働研究機構が平成9年10月に実施した「情報通信機器の活用による在宅就業実態調査」で、推計値が出されている。この調査は業務発注側の企業677社(10)(有効回答216)を対象に、どのくらいの在宅就業者に業務を発注しているか等の質問をし、さらにそこで把握された在宅就業者2,278人(有効回答270)に在宅就業の実態を聞いたものである。在宅就業ということでは非事業者SOHOだけでなく、事業者SOHOも対象に入っていると思われるが、調査結果では在宅就業の内容が文章入力・テープ起こし(43.7%)、データ入力(25.2%)となっており、対象者の少なくとも7割方は非事業者SOHOにあたるものと想定される。同調査によれば、「在宅ワーカーの数は、出版印刷、情報サービス、専門サービス等の業種に限っても、文章入力・テープ起こし、データ入力、設計・製図、デザイン、DTP・電算写植、プログラミング、翻訳、シテム設計といった分野で、約17万4千人程度が想定される」(11)とされるが、「事業所数からみれば全体の3%を占めるに過ぎず、これら以外の業種分野も含めれば在宅ワーカー数はさらに多くなるものと見込まれる」との記述もある。
 同調査では、人口推計を行うにあたって、有効回答率が低いという理由から発注側企業における在宅ワーカーへの発注実施率30.8%を半数に減らして推計を行っている(11)が、膨大なインターネット上でのSOHOサポートサイトの量やその最近の増加傾向を鑑みれば、推計値は上方修正をしてもいいのではないかと思われてくる。ここでは非事業者SOHOを約35〜50万人と見積もることとする。
 B被雇用者SOHOであるが、これに関しては社団法人日本テレワーク協会(旧称日本サテライトオフィス協会)によって継続して実施されてきた「テレワーク実態調査」の結果が参考となる。(12)
 平成12年1〜3月に実施された最新の調査結果では、テレワークを実施する企業は全体の12.7%とされ、そのうち「在宅勤務が主たるテレワーカー」である企業が45.7%、「サテライトオフィス勤務が主たるテレワーカー」企業が4.3%、「モバイル勤務が主たるテレワーカー」企業が38.6%とされる。同調査は東京都区部や大阪市、福岡市など全国7都市に本社を置く約5,000社とその従業員12,300人を対象に調査されたものであるが、全国ベースでのテレワーク人口の推計値は、在宅勤務テレワーカー112.6万人、サテライトオフィス勤務テレワーカー10.6万人、モバイル勤務テレワーカー95.1万人となっている。
 【図1】のB被雇用者SOHOという概念にあてはめれば、在宅勤務テレワーカー112.6万人とサテライトオフィス勤務テレワーカー10.6万人を足した数値123.2万人がBの人口となる。
 しかしながら、同調査におけるテレワーカーには、「月に1回あるいは月に1回未満」テレワーク(在宅勤務等)を行う(7.1%)という者も含まれており、またもっとも多いのは「週に1、2回」テレワークを行うという者(30.0%)である。SOHOという言葉のもともとの意味である「小規模オフィスやホームオフィスで働いているという者」というニュアンスから見ると、週のうちの半分以上は小規模オフィスや在宅勤務しているものを指したいと思われてくる。そうした観点から調査結果を見ると「週に3,4回」テレワークをする者は18.6%、毎日テレワークをする者は20.0%という数値が出ている。両者を合計した38.6%をBの推計値123.2万人に掛けた数値47.6万人をここでは採用することとしたい。(【表3】ではあくまでもおおまかな推計値であるという観点から45〜50万人という表現とした)
 以上の検討結果をまとめたものが、【表3】SOHO人口の推計値である。@〜Bまでを一つにした数値では、SOHO人口が130〜160万人となった。
この数値は、就業者総数6,462万人(平成11年/労働力調査)を母数とすると、2.01〜2.48%となり、それほど大きな数値とは感じられないかもしれないが、例えば農林業に従事している自営業主152万人と比較した時にはほぼ同等の大きさとなる。
またAの非事業所SOHOに関しては、現時点では統計上の就業者数に組み入れられていない事がほどんどであろう。しかし少子化による長期的な労働力人口の低下を鑑みたとき、非事業所SOHOをいかに労働力に組み入れていくかが将来にわたっての大きな課題となってくるに違いない。

【表3】SOHO人口の推計値
@事業者SOHO                  
  −従業員10人未満の零細事業所のトップ層

50〜60万人
A非事業者SOHO                 
  −主婦、学生、リタイア高齢者、身障者等
  −副業を行っている企業内ワーカー(雇用者)

35〜50万人
B被雇用者SOHO                 
  −在宅勤務、小規模サテライトオフィス勤務等
45〜50万人
合計値   130〜160万人

 SOHOと近い概念と捉えられている「マイクロビジネス」の人口に関しては、【図1】で示した概念で考えるならば、業種を問わないということになり、それはまさに「事業所統計調査」の約600万人にあたるということが言える。雇用されていないという働き方、「個業」を実践している層がこれだけいるということである。情報通信インフラの整備に連れて、今後このマイクロビジネス層はどんどんITを活用していくようになるに違いない。その意味では【表3】のSOHO人口の増加速度は今後どんどん加速していくに違いない。

5.SOHOにとっての課題、問題点

 SOHOを対象としたアンケート調査等は、最近よく実施されるようになってきている。ここでは紙面の関係上、筆者が関わった社団法人日本テレワーク協会による最新の調査結果を元にSOHOの課題の概観を示したい。
 結論から先に示せば、SOHOにとっての現状でのとくに大きな問題点は「営業力の弱さ」である。また得意分野に対する技術・技量(ノウハウ)はあるもののマネジメントに関しては契約や回収等に関する実務経験が不足している傾向がみられる。したがって、独立したものの仕事が得られないケースや仕事は取れたものの納品や回収に際してトラブルとなるケース等が発生している。
 【図2】は、日本テレワークが、平成12年度に実施した調査結果の一部であるが、これを見ても上記の点が読み取れる。(調査回答者はインターネット上で、ホームページ作成に代表されるような情報系のサービスを受託できる事をPRしている企業や個人など計732。内訳は株式会社289、有限会社166、個人244、その他33。電子メールとウェブによる調査で回答率は7.89%。)
 全体的傾向として「仕事の多い時期と少ない時期の変動」や「仕事の受注量の少なさ」「営業面での能力や努力、体制等」といった営業力の弱さにつながる項目が課題・問題点として上位にあがっているが、この傾向は株式会社よりも個人と有限会社(従業員数5人以下が79.6%を占める)で顕著である。また「支払いや契約等のトラブル時のサポートがないこと」「税金や法務、財務面などでの相談窓口がないこと」「支払い等の確実性への不安(顧客の信用問題)」といった項目を課題・問題点としている者の割合は個人、有限会社で相対的に高い値となっているが、とくに個人の事業者では飛びぬけて高くなっている。
 また他に読み取れる特徴としては、個人では「年金、健康保険など福利厚生面での不安」を、有限会社では「資金繰り等の金銭面での不安」を課題・問題点としてあげている数が相対的に大きい。そもそも個人の事業者は株式会社よりも各項目に関して「問題がある」「多いに問題がある」と回答する割合が50%も高い傾向にある。

【図2】事業を行う上での課題・問題点(「問題がある」「多いに問題がある」と回答した者の割合)
[(社)日本テレワーク協会マイクロビジネス協議会による平成12年度調査結果より]


(%)
課題・問題点など 株式会社 有限会社 個人
2.仕事の多い時期と少ない時期の変動 39.8 51.2 55.7
1.仕事の受注量の少なさ 35.6 47.6 52.9
7.営業(仕事をとる)面での能力や努力、体制等 35.0 41.6 43.9
3.仕事の単価 35.6 42.2 38.2
13.事業資金や資金繰り等の金銭面での不安 27.3 41.0 34.4
14.年金、健康保険など福利厚生面での不安 13.2 35.5 47.9
8.顧客との交流の機会や場の少なさ 17.3 32.5 32.8
15.能力開発や教育の仕組み等に関しての不安 21.8 23.5 24.2
4.仕事のスケジューリングや進捗管理 19.0 16.8 19.3
6.発注者の指示のわかりにくさ、あいまいさ 18.0 16.9 15.2
11.支払いや契約等のトラブル時のサポートがないこと 8.3 16.2 28.3
12.税金や法務、財務面などでの相談窓口がないこと 6.5 13.8 22.6
10.支払い等の確実性への不安(顧客の信用問題) 6.5 10.8 16.4
16.外注先との仕事のやりとりや金銭面などでの問題 4.5 12.0 12.7
9.仕事の成果や品質面での不安 10.4 9.6 6.9
5.仕事仲間との連絡・協力や人間関係 5.5 7.8 5.7
304.1 419.0 457.1
「株式会社」:「有限会社」:「個人」 1.00 1.38 1.50


6.解決に向けて〜エージェントの必要性と協議会設立〜
 
 前述したようなSOHO層の弱点を補い課題を解決するために、SOHO層と業務を発注するクライアント側との間にたち、受注発注の取りまとめ役や橋渡し役ともいうべき役割を担う仲介事業者(エージェント)の存在が注目されるに至っている。
 エージェントの役割の第一は、SOHO層にとっての最大の課題である営業力の弱さを補い“営業代行”を行う点にある。エージェントはSOHOに業務を発注あるいは斡旋、仲介する。この場合、エージェントはSOHOと支払いや契約上でのトラブルが起きないようにしなければならない。また税金や法務、財務面などでの相談窓口機能をエージェントが有したり、あるいは年金、健康保険など福利厚生面での不安に対しても適切なサポートができることが望ましい。他にもSOHOに対して、適切な教育研修プログラムを提供したり、金銭面でのサポートができることが期待される。
 こうしたエージェントは、新しい業態であるだけに、中にはSOHOに対して仕事の仲介・斡旋をうたってパソコン等の物品を高価で販売し結果的に詐欺まがいの行為を行っている業者も存在する。SOHOを支援するという視点にたったエージェントの発展が必要であると考えられる。

 社団法人日本テレワーク協会では、平成12年8月に「マイクロビジネス協議会」(13)を設立し、SOHOやまた広く業種を問わないマイクロビジネスのサポートを行う業態(エージェント)の組織化に着手している。同協議会の意図は、SOHO/マイクロビジネス層の支援・発展にあるが、そのための有効な方策としてエージェントに注目しているわけである。現在、同協議会に加入しているエージェントとその関連事業者は368社で、それらがネットワークしているマイクロビジネス層は56,600人に及ぶ。(エージェント1社あたり約150人のSOHO/マイクロビジネス層がネットワークされている計算となる。)
同協議会では、【表4】に示すような分科会活動を行い、前述したようなエージェントの役割と必要性に則った仕組みづくりを目指している。
 またこうした活動とも連携しつつ、現在では静岡県や福岡県、岡山県、高知県など複数の自治体が、各地域の実情を踏まえた独自の展開を始め出している。自治体としても今後の地域の産業振興を考えた際には、SOHO/マイクロビジネス層に注目せざるを得ない状況が生じているのである。エージェントの協議会を地域内で作る、SOHO支援施設を立ち上がる等、具体的な支援策はいろいろであるが、地域内の失業率を下げるためにもSOHO/マイクロビジネス層が伸びることが強く望まれている。

【表4】マイクロビジネス協議会の分科会構成(平成13年度
分科会の名称 役割
ビジネスマッチング分科会
(第1分科会)
発注側とMBエージェントを結び付けるバーチャル及びリアルなビジネスマッチングプレイスの構築
エージェント認証分科会
(第2分科会)
発注側が業務を発注しやすくなる仕組みとしてのエージェントの認定制度づくり
金融・金銭保証分科会
(第3分科会)
MBエージェントやマイクロビジネス層に対しての金銭面でのサポートの仕組み構築
福利厚生分科会
(第4分科会)
MBエージェントを介して、マイクロビジネス層にとっての効果的で魅力的な福利厚生の仕組みの構築
教育研修分科会
(第5分科会)
マイクロビジネス層への教育研修制度およびMBエージェントという新業態を起業する為の教育研修制度づくり
地域活性化分科会
(第6分科会)
地域におけるMBエージェントとマイクロビジネス層の発展方策の構築とその展開



<注記>
(1)W.A.スピンクス,SOHO類型への提案,第3回日本テレワーク学会研究発表大会論文集,2001
(2)「テレワーク」に関しては、日本テレワーク学会が「テレワークとは、情報・通信技術の利用により時間・空間的束縛から解放された多様な就労・作業形態をいう」と定義している。
(3)山本喜則,最近のSOHO関連Webサイトの傾向分析,第2回日本テレワーク学会研究発表大会論文集,2000
(4)検索作業実施日は、2001年8月15日。
(5) http://www.japan-telework.or.jp/mb/
(6) http://www.j-soho.or.jp/library/library10.html
(7)平成13年に調査が実施される第18回事業所・企業統計調査では、「従来の調査項目に加えて、近年の企業活動の多角化、企業再編の活発化及び企業活動における情報化の進展等を踏まえ、企業グループの構造、企業の合併・分割の状況、電子商取引の実施状況等、企業関連項目の充実」(http://www.stat.go.jp/info/guide/8-06-02.htm)が図られることとなっているため、例えば「電子商取引の実施状況」等のデータと企業規模を照らし合わせれば、より正確なSOHOの推計値に近づける可能性が高まると思われる。
(8) 同調査の調査対象者は、全国の15歳以上の就業者。就業者地域分布を基にサンプル数を割り当て、ランダムに電話かけて聞き取り調査をしたとされる。男女ビジネス・パーソン1万275人から回答を得た。 http://ma.nikkeibp.co.jp/audit/info.html
(9) 日本労働研究機構によって平成13年6月に発表された調査結果による。http://www.jil.go.jp/statis/doko/itkatuyo/itkatuyo.htm参照。従業員数300人以上の企業10,000社、情報関連企業調査は、ソフトウェア業、情報処理サービス業、情報提供サービス業に属する従業員数10人以上の企業7,413社に調査票を郵送。うち回答があったのは、IT活用企業調査が1,637社、情報関連企業調査が1,536社。調査実施期間は、平成12年12月7日〜22日。
(10)調査は、在宅就業者に業務を出していると想定された1)印刷・出版・同関連産業、2)広告・調査。情報サービス業、3)専門サービス業(土木建築サービス業、経営コンサルタントサービス業、機械設計業、デザイン業、翻訳業)、4)その他の事業サービス業(速記・筆耕・複写業、広告征作、労働者派遣業)を対象にして実施された。発注事業所の業種構成は印刷出版(28.2%)と情報サービス(26.9%)で過半数を占め、土木・建築・機械設計(15.7%)、広告・宣伝物製作(9.3%)、調査・経営コンサルタント(5.6%)などとなっている。従業員規模は10人未満が32.8%、10〜29人が39.3%と30人未満が7割強を占める一方、50人以上は16.2%に過ぎず、小零細規模の傾向が強い。http://www.jil.go.jp/kisya/josei/980619_01_j/980619_01_j_gaiyou.html参照。
(11) 203,500社       × 15.4% ×  12.8人                    ÷  2.3社   ≒174,000人
┌           ┐            ┌          ┐
│事業所/企業統 │(注)         │1事業所平均  │ (1人平均受託先)
│計調査による調 │            │の発注先在宅 │
│査対象業種に係 │            │就労者数    │
│る企業数     │            └           ┘
└           ┘
 (注)調査対象業種において、実施率は30.8%(2,200社中677社で実施)となっているが、有効回答率が7.1%と低いことから、これを1/2に割引いた15.4%を想定。
http://www.jil.go.jp/kisya/josei/20000308_01_j/20000308_01_j_honbun.html#−3参照。
(12) 社団法人日本テレワーク協会,日本のテレワーク実態調査研究報告書(平成12年度版),2000
(13)マイクロビジネス協議会のホームページは、http://www.japan-telework.or.jp/mb/